以前、ミラノ郊外の国際クラブ(ミラノで乳がん切りました/1章)の料理教室で、この短い乾麺を見たとたん、その特徴的な茶色がかった灰色に、「ひょっとして、これは蕎麦(そば)か?」と驚いた。まさか、と疑いつつ原材料を見てみると、確かにソバ粉だった。
しかし、イタリアで蕎麦!?
ミラノっ子に聞いてみると、ピッツォッケリは北イタリアの名物料理らしい。それを知って納得した。日本で蕎麦は、痩せ地でも育つことが知られている。北イタリアからスイスにかけてのアルプス地方には、氷河に削られてできた大きなU字谷があちこちにあるが、肥沃な表土は氷河に運ばれてなくなってしまったため、土地がひどく痩せている。そう、栽培条件が一致しているのだ。ならばホントに蕎麦かも。
で、どうやって食べるのか?
なんと、なんと、切った青菜とじゃが芋と一緒にゆでてから、溶けるチーズをかけるのだと言う。
ウッソー。
蕎麦にチーズ!?
食べてみると、わたしは気に入った。しかし意気揚々と家で料理してみると、わたし以外の全員が口をそろえて、「二度とゴメン」と言う。亭主殿の感覚では、日本の蕎麦ほど香りが高くないし、洗練された味でもないらしい。残念。
ミラノっ子に「日本にもピッツォッケリがあるんだよ」と言うと、わたしと同じように「ウッソー」と驚く。彼らは北イタリアにしかないと信じているのだ。料理方法を聞かれて、「干した海藻と魚で出汁(だし)をとって、大豆のソースで味をつけて、それに浸して食べるのよ」とわたしが答えると、彼らは眉間にシワを寄せて「・・・まずそう」とつぶやく。日本人にイタリアのピッツォッケリの食べ方を話した時の反応とまったく同じで、なかなか笑える。