このところ幸か不幸か翻訳依頼がないので、庭仕事に精を出している。
農家の1年は忙しい。農作物の世話は夫任せだが、わたしも春から秋にかけてはあちこちの草刈りに追われ、冬は広い敷地の植木の刈り込みをして回る。 裏の斜面のイスノキの生垣、表の金木犀(きんもくせい)2本、大きな樫(かし)の木数本、夾竹桃(きょうちくとう)に梅の木3本、そして椿、卯木(うつぎ)、錦木(にしきぎ)・・・。
ついでに、はびこった笹を刈り、藤やつる草の根を退治する。落とした枝や根は集めて田んぼまで運んで、亭主殿に焼いてもらう。
ピーピー、クルクルと愛らしい声が聞こえてくるのは、上の椿の花の蜜を吸いに来た目白(めじろ)か。今年は暖冬でありがたい。
山茶花(さざんか)の伸びた枝を刈ろうと思ったが、ちょうど花盛り。花の枝を切るとはなんと無粋なことか、とためらったが、今刈ってしまわなくては、いつ翻訳の仕事が来るかわからないし、そうこうしているうちに春が来る。
ならば、刈った花の枝を活ければいい。
わたしの母も、よく庭の花を切ってはいろんな花瓶に活けていた(10月のしおり/茗荷の花)。以前、誕生日にもらった花束が入っていた篭(かご)がちょうどいい大きさだ。鮮やかな濃いピンクの山茶花をたっぷりと活けて隅の棚に置くと、古くて暗い農家の部屋がパッと明るくなった。