注意:ここでは猪を捕るための罠や捕った後の解体の様子を、わたしがその場で見たとおりに書いている。残虐な描写や写真は一切ないつもりだが、気の弱い心の優しい人は、読まないほうがいいかもしれない。わたしのような「野蛮人」向きの記事だと、一言お断りしておく。
動物の屠(と)殺や解体は可哀そう、残酷、と言う人がいる。その気持ちはわかる。しかしほとんどの人は、誰かが殺してくれた牛や豚を毎日食べているではないか。わたしたち人間はみんな、基本的に他の動物の生命を奪って生きている罪深い生き物なのだ。ましてや、わたしたち百姓は猪の被害にあっているから、害獣駆除はありがたいことで、駆除するなら肉を食べる方が有益だと、わたしは思う。
隣のケイさんを通じて頼んでおくと、「猪が罠にかかったから『解体』作業をする、よければ見に来るか」と電話がかかってきた。
まず猪が罠にかかった現場に行く。
「これはま、50キロくらいだな。牙がないから雌だ」とジンさんが説明する。
「牙があるのは雄だけなのよ。今年は猪年だろ、年賀状なんかに牙の生えた猪と、仔の瓜ン坊の絵なんか一緒に描いてあるが、ありゃウソだ。雄は子育てしないから。で、こいつは乳首がわかんないから、まだお産してないね。成獣だけど。」これは犬や猫と同じだ。お産の経験があると、仔に吸われた乳首がはっきり見える。
ジンさんはここら辺りの猪捕りの名人で、これまでに800頭近く捕ったそうな。たいていの猟師が捕るのは年10頭前後なのに、彼は毎年4、50頭捕っている。並外れた腕だ。
わたしは彼の説明を聞きながら猪の檻や解体を見学して、理由がよくわかった。ジンさんは実に頭がいい。そして捕り方にしても解体の道具にしても、次から次へと工夫をしている。手先も器用だ。昔は大きな工場の技能工だったと聞いて納得した。
罠は2畳くらいの檻(おり)で、猪が入ると戸が閉まる仕掛け。餌は米糠(ぬか)で、まずは檻から少し離れたところにまき、毎日行って補充する。猪は最初は警戒するが、大丈夫とわかると次第に安心してしょっちゅう食べに来るようになる。そこで初めて檻の近く、入口のすぐ外、そして中へと糠をまいていく、というわけだ。
う~ん、ジンさんは猪の行動や性質をよく理解しているねぇ、賢い!
猪の捕獲・解体の見学 全 はこちらから
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