解体場には櫓(やぐら)が組んであり、計量計が見えた。猪の後ろ足をくくって電動滑車でぶら下げると体重は48キロで、名人ジンさんの「ま、50キロ」という見立て通り。精肉は雌で全体重の半分、雄で4割にあたると言う。「雌の方が肉が柔らかくて美味いのよ。今は冬だから脂がのってる。夏は脂がないよ」。ナルホド。人間も冬の方が脂が多いかも。
「写真を撮って、私のホームページに載せてもいい?」と尋ねると快諾してもらえた。「じゃがの」とジンさんの仲間が横目でわたしを見た。「解体シーンは残酷じゃ、ちゅうて非難する人もおるけぇ、モロの写真はやめちょいた方がええで」。ハーイ。
いかにもよく切れそうなナイフで、仲間の1人は猪の頸動脈を割(さ)いた。血抜きである。よく血を抜いてあると、肉が臭くならないらしい。「あれ、口からあんまし血が出ないな」と彼はぼやいた。「どっか体の中で溜まってんだ」。後でわかったが、肺の外に血が溜まっていた。ホースをとって水で勢いよく血を洗い流す。櫓の両側には井戸水の蛇口が2カ所あり、水圧も高かった。
続けて2人がバーナーを出し、4本の足の付け根の毛を焼いた。ダニがよくつく場所で、目的はダニ退治らしい。ダニに噛まれると、ウチの犬でも経験があるが(猫と山羊と犬/十八章)長期間、猛烈に痒(かゆ)い。これは解体作業をする人間がダニに噛まれないための予防措置だ。
2人とも長い前掛けをかけて長靴を履き、手にはラテックスの手袋、手首にもビニールのアームカバーがはまっている。わたしとケイさんにもはめろと勧めてくれた。準備万端。
猪の捕獲・解体の見学 全 はこちらから
No Comments