今住んでいる家には、50年以上前からほぼ同じ、という小さな日本庭園がある。日本庭園というものは、わたしが元々大好きな自然の風景とは違って人工的だが、それなりに庭木の位置や大きさのバランスがとれていて美しく、季節ごとにいろいろな葉や花が楽しめる筈、なのだが、わたしが木を刈り込んでいると、どうも庭がパッとしない。
「なんともとりとめのない庭ねぇ」と法事に来た親戚からも言われる始末。
どうして? いったい何をどうすればいいの?
悩んでいると、新聞で「要白」という語に出くわした。日本画で使われる言葉で、画面に余白が少ないとメインの題材が生きてこないことから、「必要な余白」という意味らしかった。
ナルホド。この庭にも空白が少な過ぎるわけか。
そう思って庭を眺めてみると、どうも問題は木ではなく下草にあるらしい。黄色い花が咲く石蕗(つわぶき)、藤色の花が咲く薮蘭(やぶらん)、赤い実がなる万両や万年青(おもと)、青い実がなる龍のひげなどは風情があるし、せっかく生えてきたのだと思うと、わたしはついつい抜かずにそのまま茂らせてしまう。それが多過ぎて「庭の要白」が足りなくなったのだ。
フム。では思い切って下草を始末するか。
石蕗と薮蘭を切りまくり、龍のひげの茂みを小さくし、万両を30本抜いた。しかしそれでも、万両はあちこちにある。鳥が増やしたのね。いったい全部で何本生えているのかと残りを数えてみたら、10センチほどの小さいのまで入れて70本あった。
全部で100本、万両があったのだ。
なんとまぁ。
改めてもう40本抜いた。まだ30本ある。
ま、ボチボチ抜きましょ。
どこかで目白(めじろ)がキュルキュルと可愛らしい声で鳴いている。