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2022年10月のしおり 金木犀

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金木犀(キンモクセイ)の甘い香りは、夜の闇の中でも濃厚に漂ってくる。その香りをかぐたび、遠い昔のせつない恋の思い出がよみがえる。

その時、わたしがその人を好きなのと同じように、その人もわたしのことを好きなのだと信じていた。だけど、「毎晩寝ようとすると、君の顔がふっと目に浮かぶんだ」とその人が言ったとたん、わたしは嬉しいと同時に、ひどく哀しくなった。

わたしはその頃「身も世もないほど」恋い焦がれていて、四六時中その人のことが頭にあった。忘れていられるのは、他の何かに熱中している間しかない。だけどその人がわたしのことを思っているのは、寝る前の一瞬に過ぎないのだ。この人はわたしのことをちょっと好きなだけ。

それは残酷な事実だった。

ユーミン(荒井由実)の歌にもある。「いつだって I love you more than you You love me少しだけ片想いmore than you」

だから、そんな想いをしたのは、私だけじゃない……。

もう一つ思い出すのは違う時期の、絶望的な片想い。好きで好きで、という気持ちには甘いものがあったけれど、わたしがその人の眼中にないのは明らかだったから、「この恋がかなう望みはゼロ」と思うと悲しくて泣いてばかりいた。

年月がたち、そんな苦しい思いとは無縁の平穏な日々を送る今になっても、花の香は過ぎた日の想いを鮮やかに運んでくる。忘れられない想いを……

あなたにもあるだろうか、そんな想いが?

 

別の時には、金木犀独特の濃厚な香りに、自分の想い人に自分を愛させる魔法の力があったらいいなと願って、詩をつくったこともある(木犀https://madoka-jinsei.net/pdf/poem/poem_04.pdf)。