2月に2頭目の猪が捕れた時、わたしはなぜ今まで捕れなかったかが少しわかったような気がした。
慎重過ぎたのだ。
「猪が奥まで入って罠の真ん中の竹の棒が動くと、罠の上の仕掛けが外れる。3回外れていたらもうまちがいないから、戸が落ちるようピンを抜け」と最初に教わった記憶があるから、これまでは仕掛けが3回外れるまで待っていた。
しかし実際には、猪が連続3日わたしの罠まで来ているとは限らない。わたしが犬の散歩に行くときには、日によってルートを変える。猪もあっちに行ったりこっちに来たりしているだろう。だから、仕掛けが外れたらとりあえずピンを抜いておけば、もっと猪がかかるのではないか?
以前猪の罠を仕掛けていた近所のヨシオさんに話すと、「そりゃそうじゃ、儂(わし)なんかいっぺん仕掛けが外れちょったら、はぁ(もう)すぐピンを抜くで」とうなずく。
釣り好きの亭主殿も、「もっと早くからピンを抜いたら?」と以前から言っていた。釣りも猟も、餌を使って野生の生き物をつかまえるという点では同じ。ここぞ、という機会を逃したら捕れない。
よし、さっさとピンを抜こう。
そして2月には、わたしの罠に来ているのは1頭だけではないのではないか、という気もしていた。たぶんまだ、捕れる。
3月7日、また捕れた!
猪猟師の自信がついたねぇ。
ただし今回はちと小さめ。30~40キロかと思ったら、わずか22キロ。雄。3人で解体して精肉にしたら5キロしかない。「体重を読むのが下手じゃのう」「おまえ今度からぁもうちぃと大きいのを捕れや」と先輩には叱られるばかり。
それでもいい。1年に2頭捕れてわたしは嬉しい。
これからもっと捕るぞ。