イモリ(井守)を肉眼で見るのは初めてだ。1字違いのヤモリ(家守)なら緑がかった地味な灰色で、小さい時から夏にガラス窓の外側を吸盤のついた足で上り下りしているのを見ているが、あれは爬虫類でトカゲの仲間。
イモリは両生類。蛙の仲間だから、全然違う。
亭主殿は「この辺じゃ赤腹って言うよ」。確かに黒っぽい背中と対照的に、腹は驚くほど鮮やかな朱色だ。
見つけたのは家の隣の湿田。泥の中で何やら動いていた。ここは元々米を作っていたところに20年ほど前、義父母が米の代わりに花菖蒲を山ほど植えた。錆朱、白、藤色、濃紺、縁が青で中が白、縁が白で中が紫など計10種類あり、5月から6月にかけて次々と咲く。見事だった。
ところがわたしたちが引っ越してきて11年間、わたしは家の庭や裏山の手入れ、亭主殿は稲と野菜・果樹の世話に追われ、なんにもせず放っていると、雑草に負けて花菖蒲は半分ほどに減ってしまった。もったいない。
そこで今年は一念発起して、5月の連休明けから毎日のように草をとっている。それでも1時間で1畳か2畳分しかきれいにならない。こっちの草を引いたと思ったらあっちが伸び、あっちを取ったと思ったら別のところが茂る。いたちごっことはこのことだ。
しかし一度は徹底的に雑草を退治しないと、また種が落ちて来年育つ。ちょうどコロナの後遺症が長引いて疲労・倦怠感が抜けず、最近は翻訳をしていないから、草取りに専念しているわけ。
けっこう楽しい。わたしにとって草取りはスポーツ感覚で、身体を動かして汗かいてデトックス。癒し効果もある。
おまけにこんな、今まで見たことのなかった生き物との出会いが待っている。
自然相手の作業はいいなぁ。