5月のしおり 筍掘り その1

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毎年、ウチの山二つには200本近い筍が生える。

「山」と言っても斜面のごく一部で、昔は風呂や台所の燃料の薪(たきぎ)を取る場所だったらしい。それがガスや電気の普及で薪が要らなくなると、手入れをしなくなり、竹が「のして」きた。

放っておくと竹が密生して歩けなくなるから筍を採る、というわけだが、筍採りはなかなか楽しい。わたしは結婚して初めて筍を鍬(くわ)で掘って、「農家の長男と結婚してよかった……」と思ったものだ。

その時は義父が教えてくれたが、慣れないと、振りおろす鍬が狙い通り筍に当たらない。当たっても、鍬の刃が充分に筍にくいこんでいるとは限らない。「おい、そねぇコジっちゃぁいけん、鍬が壊れる」と義父が言うのに、頑固なわたしは鍬の柄を無理押しして、案の定、柄にひびが入った。義父はさぞかしあきれたろう。今でも覚えている。

この写真の右側の筍は、伸びすぎて食べるのには向かないから、たたっ切って捨てる。真ん中手前の筍は長さが適度だし、太くてものがいい。土を少し掘って、根元を切る。左の筍はちと育ち過ぎで、亭主が捨ててしまえと言うのを、ケチなわたしが拾って帰る。

こうして一回に2、30本の筍を取り、竹になりかけている筍は次々と切ったり、蹴とばしたり、引き倒したりして始末する。1時間たつと、ジワリと汗がにじんでくる。

鶯(ウグイス)の谷渡りが聞こえる。

どういうわけか、ウチでタガと呼ぶ山の筍は、穂先が黄色っぽくてえぐみが少なく柔らかい。サヤと呼ぶ山の筍は、穂先が緑でえぐみが強く、やや硬い。タガの山は南側でサヤの山は北側に面しているからか、地質が違うのか、同じ竹でも筍の味は微妙に違うところが不思議だ。

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