契約書の和訳・英訳

翻訳

わたしは翻訳屋として、一応は医学薬学を専門としている。翻訳学校で習ったし、十年ほどだが経験もある。

契約書なんて、まるで専門外。

しかし翻訳会社からオファーがくれば、引き受ける。少し前に、臨床試験関連の契約書の和訳と英訳をいくつか引き受けた際は、原文の英語も日本語もわりに柔らかく、素人にもまあまあわかりやすい用語と内容だった。

それでも、日本語原文に「賠償責任と補償責任」なんて書いてあると、 「エッ、和英辞書をひくと賠償も補償も同じ英語が出てくるのに、違う英語に訳さないといけないの?」 とアタフタする。この時は言われるままに短い納期でホイホイと引き受けてしまったもので、胃薬をのんでは毎日10時間以上働くハメになった。

今回は販売契約書の和訳だから、わたしの知らない経済用語が満載。臨床試験の契約書とはケタ違いの難しさ。頼みこんで納期を長くしてもらった。

いざ翻訳を始めてみると、案の定、何度もゲゲッとくる。

見当のつかない英語にぶち当たると、ネットで英文契約書関連のブログを片っ端からのぞく。すると訳語の日本語として、「十分な有価約因」とか「単独かつ絶対的な裁量」なぞという、今まで見たことのない本格的な契約用語がガンガン出てくる。「有価約因」とは「価値のある対価」という意味で、「単独かつ絶対的な裁量により」とは「一存で」という意味らしかった。ハァさいですか、という感じだ。

そのうえ、一文が7行という長文があちこちにあって、読み終わったときには何が何やら頭が混乱している。できるだけ途中で切って短い文にするが、意味が変わってはいけない。神経を使うことが並じゃなかった。

あー、もう契約書は翻訳したくなーい!

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