ダン・ブラウンの「オリジン」を英語で読んだ。ベストセラーだけあって、内容は本格的でおもしろく、英語は癖がなくてわりに読みやすい。
タイトルの「オリジン」は人類の「起源」という意味だ。人工知能(AI)と殺人事件を扱っているものの、テーマは宗教、特に一神教と科学との対立。
つまり、旧約聖書では神が人間の祖先をつくったと書かれているけれど、科学ではアメーバから人間の祖先が進化したと考えられている、という矛盾。イタリアで初めて聞いた時にはあっけにとられた。欧米のキリスト教社会ではよく知られた問題だが、日本ではなじみのない観点だろう。
わたしは宗教と信仰に少し関心がある。
迷ってばかりの人間に、信仰は助けになると思っている。
とはいえ、仏教の悟りはピンとこないし、キリスト教は「世界の創造主がいる」というところでひっかかる。イタリアに住んでいた頃には、自分のことを「自然信仰を元にした神道の信者だ」とイタリア人に言っていたが、少し真実とは違う。たぶん自然信仰こそが、わたしがボンヤリと持っている「信仰心みたいなもの」に一番近い。
わたしは自然が好きだ。自然の風景は心底美しいなぁと思う。そして木や草、鳥や虫を見ていると、時々わたし自身と同次元で考えてしまう。自分がこの木だったら、この虫だったら、と考えてしまうのだ。一方で地震や台風のエネルギーには畏(おそ)れを感じる。だから、「人知を超えた存在」は、神というより、宇宙とか自然そのものではないかと感じている。
「人知を超えた存在」を意識すると、日常の次元から離れられると同時に、少しは人間が謙虚になれるように思う。現代の日本人に問いかけたい話題である。
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