亡くなった義父が残した書類の中には、圃場(ほじょう)整備に関するものもある。日付はざっと20年前だ。
しかし、実際にウチの田んぼの圃場整備が始まったのは今年。
計画では、この写真の奥の左から右に新しく排水路を掘り、手前に給水路をつくる。ウチの田んぼは左手側に3枚あったのが、右手側の1枚に統合される。もし田んぼの土が粘土質で、コンバインなどの農業機械が埋まって使えない場合は、次の年に田んぼの一部を掘り返して新しく別の排水路を地下に通す予定だという。
田んぼが広くなり給排水がよくなれば、それ自体は悪いことではない。問題は誰がその田を耕すのか、ということだ。
ウチの亭主殿は今60代半ば。あと10年は身体が動くだろうが、80歳過ぎたら本気で百姓するのは無理だろう。周囲の百姓の中でも亭主殿は若手のほうで、多いのは70歳代だ。あと10年か20年経ったら、今回圃場整備される田んぼのほとんどが耕作放棄地になるのではいか、という恐れがある。
国は各地域に「中核農業者」を育成し、耕作放棄地を引き受けてもらおうと言っているが、現実には中核農業者の成り手がほとんどいない。
ところが最近、農業専門で「地域おこし協力隊」として活動している、という人と話をした。彼は3年間給料をもらいながら稲作とイチジク栽培をし、4年目からは農業収入だけで家計をまかなうことを目指している、と言っていた。うまくいくといいな、と切に願う。
国は毎年、圃場整備に億単位の金を使っている。過去に決めた計画を続けるわけだ。それよりは現状に合わせて方針を変更し、彼のような人材育成に金を集中的に使う方がよほど効果的ではないか、と思う。
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