犬の脱走

自然・動物・農業

ジョンが脱走した。

雄の柴犬系雑種で御年17歳。人間ならばとうに70歳を超した老犬で、かなり白髪が増えてなぜか耳も縮れ、聴力も衰えてきたが、ワンパク坊主という元来の性格はそのままで、「心は永遠の少年」。

脱走は今までに何度もしている。エネルギーが余っているのだ。今回は鎖の留め具が古くなって外れたらしい。辺りを見るとドライフードの袋が倒れているし、肥料の骨粉まで奥から引きずりだされている。コイツ、周到にもしこたま食べて腹を膨らませておいてから、家出したのだ。賢いねぇ。

もう1匹の犬を散歩させながら、「ジョ~ン」「帰っておいで~」と大声で呼ぶ。ジョンは出てこない。道ですれ違う人や庭にいる人に片っ端から「柴犬を見かけなかったか」と尋ね、知り合いの家にはピンポンを押して聞いて回る。どこでも「見てないですよ」との返事だ。

保健所と警察に届けたが、連絡はない。人懐こい犬だから、どこかの家で餌をもらっているのだろうとは思うが、気にかかる。生きていて欲しい。

木曜に脱走してから4日たった。

心配がつのる。

日曜になって近所から電話があった。とんで行くと、工場と事務所、自宅の間の袋小路にジョンがいた。

「土曜までは工場が動いちょるけぇ音がするじゃろ。気がつかんかったんよ。キャイ~ンて悲鳴のように鳴くんじゃが、ワシを見ても立ち上がりもせんから、弱っちょるみたいやで」と、これも犬を飼っている工場主が心配してくれる。どうやらジョンは狸か何かの臭いを追いかけて山に入り、家の裏の崖から降りてきたはいいが、戻れなくなったらしい。

歩いて家に帰ると、ジョンはいつも以上にガツガツと餌を食べた。

元気。これなら大丈夫。

やれ一安心。

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