「大聖堂」を書いたケン・フォレットが14世紀の同じ町を舞台に描いたWorld Without End(果てしなき世界)を読んだ。
少しワンパターンの気味はあるが、相変わらずフォレットはストーリー展開がうまい。読ませる。背景がこれまたおもしろく、構造欠陥のために石橋は落ち、教会の塔は崩れる。イギリス産の羊毛をイタリア人が仕入れ、目の覚めるような鮮やかな色に染めて仕立てた服がロンドンで流行る。
そーかぁ、イタリア人は昔から美に敏感で職人技術も優れてたのね。ミラノに4年住んだわたしにはなじみ深い感覚だ。
もう一つ、ムムム、と唸(うな)らされたのが、黒死病(ペスト)の大流行。
そう、今年の新型コロナウイルスの肺炎以上に恐れられ、ヨーロッパの人口の1/3から半分を死滅させたというペスト。
この小説では4年間に3度、ペストが町を襲う。
あっちでもこっちでも一家が全滅してしまい、通りは空き家だらけ。
人々は「どうせ俺も死ぬんだ」と自暴自棄になり、昼日中から酒を飲み、路上でセックスする。懺悔(ざんげ)として狂乱的に集団で自分を鞭(むち)打つ。
主人公の一人の尼僧院長は憤(いきどお)り、恋人のギルド長と共に「町のモラルを正しましょう」と呼びかけ規則を厳しくするが、自分もモラルを正さなければならず、今までは誰にも咎(とが)められなかった恋人との逢瀬を諦めるハメになる。
布マスクの着用と酢水での手洗いによって尼僧院長は感染防止を図り、3度目の流行時には町の閉鎖によって流行を防ぐ。一方、多くの農民が死んで不耕作地が激増したことから、農奴が減って自作農が増える。経済体制が変化するのだ。
さて、現代のコロナ騒ぎと重ねると何やら興味深いではないか?
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