8月のしおり バナナの花

各月のしおり 自然・動物・農業

「あのね、マドちゃん、バナナの花が咲いたよ」目を輝かせて亭主殿が告げる。

「え、去年植えたばっかりじゃろ? もう咲いたん?」

「咲いたんだよ。おもしろいよ」

バナナの花なんて見るのは生まれて初めてだ。

写真の左側が花。

まず茎のてっぺんから、少し膨らんだ円錐状の花芽がきれいなピンク色に伸びる。そして細長い花の萼(ガク)が1枚、また1枚と紫がかった濃いピンク色に開いて垂れると、中にはクリーム色のバナナの実の赤ちゃんが1列に並んで、黄色い雌しべと雄しべを乗っけている。

ガク1枚につき花数本が内蔵されているらしく、左下のガクは少し前に開いて今ではしなびかかっている。そこの雌しべと雄しべはすでに開いて受粉体制バッチリ。それに比べて、新しい右上の列の雌しべと雄しべはまだくっついていて未熟だ。

「ふうん。バナナの花ってこんなふうに咲くんだ」

「おもしろいだろ?」

「ウン、おもしろい!」

写真の右側は最初の花が2週間前に咲いて枯れた後で、実は順調に太り、今では赤紫がかったバナナの房がハッキリわかる。

去年、梅雨時分に亭主殿がカタログで注文して植えた「寒さに強いバナナ」の苗は、丈が50センチほどの茎が1本だけだった。秋に茎は4本になり、冬には一度枯れた。今年は茎の数が10本に増えて青々と葉が茂り、丈は2メートルを超すだろう。さすが熱帯性の植物、伸びが早い。

「何本バナナが食べられるかねぇ?」満面の笑顔で期待する亭主に女房は冷たい。

「あんたね、台風が来て全部こけるかもしれんのよ」

まったく「捕らぬ狸の皮算用」じゃなくて「熟れぬバナナの実の勘定」だ。

しかし楽しみなのはわたしも同じ。台風よ、来るな。

You Might Also Like

No Comments

メッセージをどうぞ / Leave a Reply

*