今年のお盆はだ~れも帰ってこれないさびしいものになった。新型コロナウイルス跋扈(ばっこ)のおかげで全国的、いやたぶん世界中そうなのだから、しょうがない。
一昨年は7人帰省した。久しぶりに海に行って(8月のしおり 海で泳ぐ)とても楽しかったことを思い出し、今年も家族3人だけでちょいと海に行ってみるか、ということになった。
この海岸は家から車で15分、きめの細かい砂がきれいでギザギザの岩や牡蠣(かき)殻がないから歩きやすい。特に海水浴場というわけではなく、近所の2家族が浮き輪持ちで来ていたくらいのひなびた場所だ。
空は一片の雲もなく晴れわたり、瀬戸内海は青く澄んで波もおだやか。まさに絶好の夏日和。
海面にキラキラ陽ざしが反射する。
浜近くの底に足を置いていると、砂と同じ色の小魚が見える。時にはわたしの足をつつく。
夫と娘は釣りをする。
岸からの投げ釣りの目当ては鱚(キス)とめ鯒(メゴチ)だが、河豚(フグ)が口先でチョンチョンとつついては餌のゴカイを取っていくばかり。竿を上げてついていたのは3センチの鯛の赤ん坊1匹だけだった。さすがに夫は笑って放してやる。
それでもふだんコンピュータの画面を前に仕事をするか、草を刈るかという日常から解放され、広い海と空をぼうっと見ているだけでホッとする、実に気分がいい、癒される、と夫はご機嫌。
わたしはいつものとおり泳ぐ。
草刈りと植木の刈り込みに精を出し過ぎて肩を傷め、夏バテのせいか長く泳げないのが難だが、海水という、空気とは違う質感の物質の中に浸り、動き、浮いているのはやっぱり格別。
顔を上げると、とたんに蝉(セミ)の声が山から聞こえてくる。
いい一日だった。
1 Comment
SS
2020年8月21日 at 1:16 PM素晴らしい日常情景描写。
私はこの夏2回目の5大湖周遊クルーズに出かけた。
あなたのような感受性があれば、素晴らしいエッセイが書けるだろうに。
広い広い湖、大海と言ってもいいような。
少しの風でも、追い風になるのと向い風になるのでは、船の速度、揺れに大きく影響することに初めて気づいた。
荒馬に何分しがみついていられるか、というロデオのように揺れる。
船酔いしないのが不思議なくらい。