少し前、1メートル以上に茂った萱(カヤ)を刈っていると、わたしのげんこつより小さい草の塊を見つけた。萱の葉と葉の間に引っかかって宙に浮いているような感じだ。塊は全部萱の葉でできていて、大部分の葉は枯れているが、中には端が青いのも混じっているから、ごく最近つくられたものだとわかる。近くには同じものがさらに2つあった。
いったいこれは何だろう?
写真を撮って亭主殿に見せると、「カヤネズミの巣じゃないか?」と言う。ネットでカヤネズミを検索してみると、確かにまっついの(まるで同じ)巣の写真が載っている。ネズミの中でも一番小さい種類らしく、薄茶色の可愛い顔をしている。
へぇ。カヤネズミ。
そんなネズミは今まで拝んだことがないねぇ。
わたしの近くで、今まで存在すら知らなかった生きものが何匹も生きているのだ。
そういえば、死んだ灰茶色の兎(ウサギ)を道の端で見たことはあるが、飛び跳ねている兎を見たことはない。太い尻尾の狐(キツネ)は、家の裏の小道に入って行くところを亭主殿が今年3度見たと言っていたが、ここに引っ越してきて6年間で見かけたのはそれだけ。爪が長い穴熊(アナグマ)は裏のユキノさんちの側溝で捕まったが、その前も後もわたしがこの目で見たことはない。
丸っこい狸(タヌキ)は夜道に時々現れる。細っこい鼬(イタチ)は昼間あぜ道を横切っていく。鼻筋が白くてイケメンの白鼻芯(ハクビシン)は1度だけ見た。猪は姿を見るより、地面を掘り返した後を見る方が圧倒的に多い。
いったいどれだけ多くの哺乳動物がわたしの周りにいるのだろう?
そんなたくさんの見えない生命に囲まれているのだと思うと、なんだか嬉しくなってくる。
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