人は、悪いことをしながら善いことをしている

その他

写真の左側は草取り前、右側は後。

娘のアパートに2週間行くことになったのだが、日中暇なのは見えていた。そこで作業着と鎌・剪定鋏(はさみ)・鋸(のこぎり)の三点セットを持って行き、アパートに沿ったツツジの植込みの草取りをしようと思い立った。このところ家の片づけのためにずっと自宅の庭仕事ができず、わたしは欲求不満の塊だったから、よその草取りでストレスを発散することにしたのだ。

毎日2時間、セッセと萱(カヤ)を抜いて雑木やつる草を切ると、見違えるようにきれいになる。身体を動かして汗をかくのは爽快。たぶんダイエットにもなる。一石三鳥だ。

植込みの中にはゴミが混じっていて、黄色い液体の入った一升瓶まであった。ちょうど管理人さんと顔を合わせ、「何ですか、それ?」と尋ねられた。

改めて一升瓶の底を見ると、小さめの蛇が沈んでいる。

マムシ酒だ。

「ヒェーーッ、わたしどうしたらいいんでしょう?」と管理人さんが叫ぶ。

「酒は下水に流せばいいわね。蛇は……」とわたしは少し考えた。「台所の流しの排水口に置く網袋があるでしょ。瓶から酒を出す時にその袋で蛇を受けて、燃えるゴミ」

それでも彼女は「エエーッ」と後ろに下がるばかり。

「ひょっとして、蛇は苦手ですか?」

「ハイッ」

「じゃわたしが始末しときますよ。わたし蛇は平気だから」とうけおうと、管理人さんは大喜び。

そこで思い出したのが、「人間とは、妙な生きものよ。悪いことをしながら善いことをしている」という池波正太郎の『鬼平犯科帳』の一節だ。わたしは自己中心的で、他人に迷惑をかけたり不快な思いをさせたりしている。草取りと蛇の始末という善行で、少しばかり罪滅ぼしをした気がするのだ。

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