2年くらい前から翻訳のオファーが減り始め、今年1年間の収入は去年の5分の1。
原因は機械翻訳やAI(人工知能)翻訳の普及。パソコンやスマホでは無料の翻訳アプリがかんたんに手に入る時代になって、英語の文章を一瞬で和訳してくれる。その出来は、まぁ6割はちゃんと意味が通じるものの、あちこちに完全な誤訳や変な日本語が混じる。だが有料の翻訳ソフトや、英語と日本語の対訳データを大量に入力して「ディープラーニング」させるAI翻訳になると、正確さや読みやすさはもっと上がるだろう。
企業が機械・AI翻訳を使う一番の利点は経費が安いことだ。初期投資にさえ金をかければ、あとは電気代と多少の手間だけで済む。1字いくらで翻訳屋に金を払うよりは、圧倒的にコストダウンできる。
こうなると生身の翻訳屋の勝ち目は薄い。技術翻訳屋の中でも専門用語を熟知し、長くて構文が複雑で時には省略や俗語が混じる原文を、一読してすぐ意味がわかるような訳文に仕上げられ、しかもスピードが速いとなると、ほんの一握りのトップクラスしかいない。
わたしは生き残れない、か……?
しかし、長いこと仕事がないと生活のハリや自分の存在価値もなくなるようで、どうも気が滅入る。ならばこの先、もう一度勉強して、新しく文芸翻訳にでも挑戦するしかないのか?
悩んでいると、半年ぶりに薬関連の和訳が来た。ウハウハと引き受けると、これが「血管内皮増殖因子受容体(何それ⁉)」から始まる専門性の高~い代物で、莫大な調査が必要。おまけに今までのペースの5割増しの高速で作業しないと納期に間に合わない量だった。21日間休まず、時には1日13時間働いてやっと納品できた。
次の仕事はいつ来るだろう?
1 Comment
SS
2022年1月2日 at 10:28 AMあけましておめでとうございます。
お雑煮もお屠蘇ももちろんお節も、門松もお正月の風物詩など何もない何回目かのお正月。
コロナの前は、年末年始は、オペラとウィンナーワルツを Roy Thompsom Hallでご鑑賞、という優雅な恒例があったが、このコロナ下では、自宅でできるお正月風物詩もないとなると、ただの一夜があけました、と同じ。
lいつもエッセイを読ませていただいてます。ありがとう。
これが無料でよめるなんていいねえ。
今年もお体にきをつけて、素敵なエッセイを書いてください