2022年5月のしおり 田舎体験ツアー

各月のしおり 文化・スポーツ 自然・動物・農業

イタリアにいたころ、アグリツリーズモという言葉を聞いた(英語ではアグリツーリズム)。直訳すると「農業観光」だが、「田舎体験」という感じに近かった。通っていたイタリア語学校の先生が、電気もガスもない古民家に友人と数日滞在し、一昔前の生活を体験して苦労もしたがおもしろかったと話していたのだ。

その時はフゥーンと思っただけだったが、自分が日本のド田舎に住んで、筍掘りや梅もぎに都会の友人を呼んでみると、「あ、これも一種の田舎体験ツアーだ」と気がついた。

友人の住むのが都会といっても、このド田舎よりは都会というだけの地方都市。しかしそこではウチのように、隣家との間がたっぷりあって人も車も少なく、周囲には緑が広がり、鳥や蛙の声が始終聞こえるというわけにはいかない。

友人たちは生まれて初めて、山の筍を探し、鍬(くわ)をふるって採った後は筍の皮をむき、かまどで火を焚くという体験にワクワクし、時には目が点になったりしながらも楽しんでくれる。お土産はゆでた筍だ。

そして「前には田んぼが広がってて、雉(キジ)だの雲雀(ヒバリ)だのが見れる。その囀(さえず)りを聞きながら作業したりお喋りしたりするのも、すっごく癒しになるわ」とニッコリ笑う。

確かに都会では得られない、自然の中での空間と時間だ。

地方の衰退が問題になる中で、こんな「田舎体験ツアー」をもっと計画すれば参加する人はけっこういて、地方の活性化に役立つと思う。個々の農家の協力が必要とはいえ、年金で暮らす高齢者のこづかいにはなる。

ついでにいうと、妙に喜ばれるのが犬の散歩。特に子どもは大好き。大人でも雑草だらけの細道を歩くのは新鮮で、のんびりしていいらしい。

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