秋晴れの日が続いている。
亭主殿は晩稲(おくて)の稲刈りが終わり、暇になってきた。「久しぶりに釣りに行ってみないか」とわたしを誘う。
「いいねぇ。どこに何釣りに行くの?」
「磯でブラクリでもやってみよう」
ブラクリは、錘(おもり)のすぐ先に餌をつけ、岸から近い岩の間に垂らしてアイナメだのメバルだのを狙う仕掛けだ。錘がコトンと底に着いたら、少し糸をくって(引き上げて)ブラブラさせるからブラクリ。魚が餌に食いついたら、ぐっと引く感触が手にまで伝わって素人でもおもしろい。
えっちらおっちらテトラポットの上に下りて、海際まで近づく。なんてこった、猛烈に歩きにくい。若い時はもう少し身が軽かった筈だが、歳をくうと足は上がらずバランス感覚も衰える。1つ1つやっこらさとテトラを乗り越える始末。
しかし空も海も青く広がり、なんとも気持ちがいい。漁船や貨物船が行き交う。いくつもの有人・無人島のはるか向こうには、四国まで見える。
大きめの岩のすぐ横の、水の色が黒っぽい場所に餌を下ろす。こういうところに魚が多いのだ。30秒もしないうちに当たりがある。ひるがえる魚がいくつも見える。腹の白い丸っこい魚はフグだ。赤いのはカサゴ、黒っぽいのはメバルだろう。菱形はカワハギで、横縞(しま)のギザミもいる。かわいいねぇ。みんな幼稚園サイズの小ささだが、唐揚げにすると美味い。
「お、引いた」、「あ、餌取られてる」、「よし、上がった、なんだ小さいよ」、「ああ~、落っこった」などと一喜一憂しながら、釣れたのは2時間で4匹。魚を取るのは目的の半分で、残りの目的は海を見ながらのんびりすることだから、二人とも大満足。
「また来ようね」
「ウン!」
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