一昨年の暮れに最初の1頭を捕ったきり、わたしは猪が捕れていない。
昨年は9月から瓜坊(仔猪)を捕ってやろうと思っていたのだが、結局始めたのは10月だった。それでも例年よりは1月早いスタートで、要するにわたしはやる気満々だったのだ。
以来、3回ほど「もうじきだ」と思うことがあった。箱罠の中の餌が無くなり、箱罠の中央の地面に置いた竹の棒が動いて、罠の上の仕掛けが外れていた。「さぁ来た。教わったとおり、念を入れてもう2日続けて仕掛けが外れていたら、戸が落ちるようにしよう」と勇んで待っていると、なかなか3日続けては仕掛けが外れていない。だから戸が落ちるようピンをはずせない。時には戸が落ちるようにしたとたん、次の日から餌を食べた形跡がなくなる。
つまり、捕れない。
わたしは段々げんなりしてきた。
どうもわたしには、猪を捕るための何か大切なことが基本的にわかっていないらしい。
もうやめようか。
しかし狩猟免許は更新したばかり。やめるのはもったいない。わたしには猪捕りのセンスがなく、どれだけがんばっても無理かもしれない。でもやめてしまえば、永遠に捕れない。とりあえず、粘ろう。
毎日毎日バカ正直に餌のヌカを置きに行く。古いヌカは捨て、辺りの様子を見る。たぶん99%ダメだろうと思いつつ、とにかく続けた。戸は落ちるようにしてある。
すると1月19日、中に猪が入っているではないか!!!
わたしはひとり奇声をあげ、踊った。
翌日解体。52キロの雌だった。お尻は大きいが、わたしより軽い。「おい、猪とおまえと並べて記念写真撮っちゃるけぇ、傍にしゃがめ」と言われて腰を落としかけたら、バランスを崩して尻もち。大笑いされた。
でも嬉しい。
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