わたしにはどうも猪捕りの才能が無いらしい。しかし、どうにかしてもっと捕りたい。
悩んでいたところ、高齢で罠かけをやめる人がいるという話を聞き、あ、これは、と思った。その罠を貸してもらえないだろうないか? 仕掛ける罠の数が増えれば、捕れる猪の数も増える筈。
そのシマダさんという人を紹介してもらい頼んでみると、幸い二つ返事でOKがもらえた。罠まで行ってたまげた。わたしのより山奥で、「ここなら猪が来るだろう」と思わせる隠れ家的な雰囲気がある。罠までの道は人が歩けるほどの狭さで、県道からも遠い。しかし他の罠はもっと奥だと聞き、一番近場の2つだけ貸してもらうことにした。
2カ所とも罠のすぐ近くには小川や池があり、地面はじるい(ぬかるんでいる)。罠の周囲にはいくつも猪の足跡が見える。うん、これなら猪が捕れそう!
シマダさんはもともと鉄砲をかついで山を歩いていたらしい。「捕れた猪の大きさと蹄(ひづめ)の大きさをよう見て覚えておきゃあ、その後で別の足跡を見てもその猪の大きさがわかるで」と言う、筋金入りの猟師だ。話を聞いていると勉強になる。
「65歳で罠猟を始めたんじゃが、箱罠でも小さい猪は捕りとうないから、センサーの糸を高めに張って、大猪だけを狙うたんよ。毎日仕事が終わると6つの罠を見回っての、捕れた猪はくくった足をロープで引きずって山から下ろしよった。1人で家の台所で解体しての、古いバスタブに一晩漬けて血抜きするのよ」と語る。シマダさんは小柄だが、すごい馬力だ。とてもわたしにはできない。
さぁ、去年は罠1つで猪が2頭捕れたから、今年は罠3つで6頭捕れるかな?
……こういうのを「捕らぬ狸の皮算用」と呼ぶのだろう。
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