猪ハンティング 17 島で解体-2

猪ハンティング 自然・動物・農業

コハミちゃんはわたしより一回り小柄で言葉も控えめだが、道具もそろえたかなりのやり手。わたしはたまげたり感心したりの連続だった。

絶命させるには、電気ショック(スタンガン)付きの槍を使う。わたしも突いてみたが、相手はたてがみのある雄の大物で、推定80キロ。わたしは力負けした。

しかもバッテリーが弱いのか接触不良か、槍先までビリビリと来ていない。

「銃もあるんじゃけど、檻の中の猪に向けて撃ったら跳弾が人に当たるかもしれん、危ない、て禁止されとるんよ」とコハミちゃんは説明し、すぐに島の猟師の世話役を呼んだ。

彼は先が二股のスタンガンを持ってきたが、「猪の毛皮が厚いけぇ、これじゃあ電気が効かん。猪を固定せんと無理じゃ」と、少し時間をかけ、ワイヤの先を輪にして猪の足にひっかけ、反対側を檻にくくりつけた。

やっと下腹の毛皮が薄いところに電気が届き、数秒後に猪は動かなくなった。更に彼は2度スタンガンを使い、完全に死んだことを確認した。もしも瀕死の猪に暴れられたら、人間は大けがをしてしまうからだ。

とはいえ、この猪はおとなしかった。普通なら箱罠の中から人間を見ると、捕まった獣は暴れる。それが時には寝そべるほどだったのは、どうも罠にかかったのが2日前で、弱っていたらしい。

コハミちゃんはたいてい毎日見回りに来るのだが、「もうじき捕れそう」と最初わたしに連絡してから実際に捕れるまで、なんと一月かかっている。実に用心深い猪だった。これだけ長期戦になると、天気も彼女の体調も悪かった前日は見回りを省いたのだった。

「丸一日飲まず食わずで暴れて、体力なくなってたんだね。可哀そうなことした」とコハミちゃんはまた猪に同情する。

You Might Also Like

No Comments

メッセージをどうぞ / Leave a Reply

*