不思議な味だった。
白い液体を一口すすると、肉や魚のだしの味、つまりコクがない。ごくあっさりしている。しかし、うまいかまずいかと聞かれれば、断然うまい。しみじみうまい。イタリア料理とも日本・中華・エスニック料理ともまるで違う、今まで食べたことのない味だ。柔らかい米かパスタか、何か具が入っている。亭主殿と2人、目をパチクリして顔を見合わせた。
何だこれは?
作り方を調べてたまげた。乳を発酵させてヨーグルトを作ると、透明な液体部分(ホエイ、乳清)と白い半固体部分(カード、凝乳)とに分かれる。この凝乳だけをとって小麦粉と練り、15日間にわたり毎日1回練り直す。さらに発酵させるのだ。そして、この塊を薄く平らに広げ、乾燥させて保存する。これがヨーグルトスープの「素」だという。
なんという乳発酵文化!
日本の納豆やみそ、しょうゆも世界に誇れる発酵食品だが、大豆製品。清酒も米から作る。あくまで植物性で、農耕社会の産物だ。ヨーグルトやチーズといった牧畜社会の乳発酵の伝統はない。乳も、モンゴルでは馬乳酒を作るというし、中東では羊や駱駝からも乳を搾っていたはずだが、日本人が飲むのは牛乳のみ。山羊は、物好きなわたしも5年飼って、乳を飲んだりチーズを作ってみたことがあるが、ま、例外だ。
世界は広いなぁ。
イスタンブールのホテルの近所で小さなスーパーに行ったときに、クノールの即席スープの袋に、このヨーグルトスープがあった。喜んで買って日本で作ってみると、まさにあの、不思議なヨーグルトスープが再現できた。「具」は、ヨーグルトと練って発酵させた小麦粉の塊だったのだ。美味しいねぇと笑いつつ、食べ尽くすのが惜しい。
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