わたしは小学6年生でナルニア国物語の第1巻を読んだ。レベルの違う壮大なスケールと異世界のおもしろさにショックを受け、深く魅了された。
そのナルニア国物語には4人の兄弟姉妹が出てくる。末娘が賢くて行動的だ。が、その上の男の子はちょっとひねくれ者。兄弟と喧嘩してひとりで歩いているときに、白い魔女に出会って橇(そり)に乗せられ、ターキッシュ・デライトという美味しいお菓子の魅力に負けて、彼は魔女に協力すると約束してしまう。
ターキッシュ・デライトを和訳すると「トルコの喜び」。以来、わたしはそれがどんな菓子なのか、ずっと気になっていた。
実は今でも、ターキッシュ・デライトはトルコ定番の土産物として存在する。ナッツ入りの硬めの果汁ゼリーで、伝統的・素朴な味。
わたしはガイドさんにナルニアの話をしてみた。ガイドさんのネット検索の結果、「ターキッシュ・デライトは昔、王宮専用の菓子だったんです。一般に売ってはいないし、作り方も秘密。外国からの賓客には土産物として渡され、帰国してもらった人が味を再現しようと試みたけど、誰も成功しなかったという話が有名です。ポイントは蜂蜜でした」。
トルコとナルニアにはもう1つ、接点がある。物語ではアスランという名のライオンが重要な役を果たしているのだが、アスランはトルコ語でライオンを意味するのだ。それをガイドさんに告げると、彼は驚いて目をみはり、「見た映画でライオンの名はアスランではなかった…」とつぶやいた。
ナルニア国物語を書いたルイスには、トルコの知識があったに違いない。調べてみると20世紀前半には、ルイスの故国イギリスそのものが、トルコに深く介入していたのだった。
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