猪の罠かけを始めて5年目。昨季は豚熱の流行で猪が大量に死んでしまい、わたしは1頭も捕れなかった。今季こそ、捕りたい(毎年のセリフだ)。4月から10月の間に捕れれば、有害鳥獣捕獲の報償金として成獣なら12,000円、仔猪でも6,000円が出るのだ。
しかし夏の猛暑が半端ない上に長く、わたしはひどくバテて動けなかった。やっとこさ9月の下旬に餌やりを再開すると、あれま、すぐに餌の糠(ぬか)がなくなる。5日目には罠の中まできれいに食われた。こんなことは初めて。
どうも元気いっぱい好奇心いっぱいの仔猪が駆け回っているらしい。
これなら捕れるぞ! 稼げるぞ!
と喜んだのはつかのま、罠の両側の扉は落ちているのに中は空っぽ。唖然として観察すると、下の地面を掘った穴がある。脱走したのだ。
こういうことをするのは穴熊(アナグマ)。名前のとおり、穴掘り名人だねぇ。
ガックリきた。
師匠のジンさんによると、今年は穴熊が異常繁殖しているらしい。猪猟師にとって穴熊は外道(狙った種類以外の獲物)だ。味はジビエの中で最高といわれてるんだけどね。
穴熊の脱走防止用に、亭主殿に頼んで目の細かい格子を檻の床の四方に張り巡らす一方で、本道の猪を狙う。今度は檻の片方の扉だけ落ちて、猪はすたこらサッサと逃げてしまった。
またもやガックリ。
そうこうするうち、ジンさんが「穴熊が捕れたが要るか?」と聞いてきた。二つ返事で引き取りに行き、猟師仲間のコハミちゃんとさばいたら、脂身だらけ。脂肪7肉3の割合だ。
しかし、ニンニクをオリーブ油で炒めて、塩胡椒した穴熊を焼くと、う、うまい! まったく癖がない。極上の牛肉並みの美味さに、亭主殿と二人、感激した。
これからは穴熊も狙うぞ!
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