ミラノに住んでいたころ、わたしがイタリアのいい加減さを嘆くたびに、「あら、南イタリアはもっとひどいのよ」とミラノっ子から言われたものだ(http://madoka-jinsei.net/ミラノで乳がん切りました/七章)。
息子一家は今、南イタリア第二の都市バーリに住んで、その「ひどいいい加減さ」を味わっている。たとえば、外国人に必要な居住許可。ミラノでは申請から2日で許可証が手に入るのに、バーリでは6カ月かかった、と息子はぼやく。
それから車の保険。最低等級での保険の掛け金がドイツで約4万~7万円、ミラノで11万円から始まるところが、バーリでは21万円から始まると言う。理由は車の盗難が多いから。
もちろん「よく盗まれる」のは家財も同じだから、息子夫婦は出かける際には必ず、家中の戸と窓のシャッターを閉めた後で、セキュリティシステムを作動させる。息子の雇用先のマジメなドイツの会社からの指示に、忠実に従っているのだ。
しかし、南イタリアでは停電が珍しくない。息子たちが二泊三日の旅行に行ったら途中停電でセキュリティシステムがダウンしてしまい、停電が終わった後も復旧しなかった。家に帰ってみたら、セキュリティシステムは動いていないし、冷蔵庫の中身もほとんど捨てるハメになったそうな。
息子がイタリア赴任と決まったとき、わたしと夫はミラノでの経験をもとに、イタリアでのあれこれがどれだけいい加減で頭にくるか、息子の嫁さんに懇々と語った。心の準備が必要だと思ったのである。実際の困難はそれ以上だったはずだが、今の彼女は「あ~イタリアあるあるですね」と笑っている。このおおらかさは、イタリア暮らしに最適の資質。息子はいい嫁さんをもらったものだ。
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